芯のある暮らし [そのほか]
電通コミュニケーション・デザイン・センターで
コミュニケーションデザイン・ディレクター/
シニア・プランニング・ディレクターを務める著者が、
発想するための技術を明かしている
『発想の技術アイデアを生むにはルールがある』
(樋口景一著、朝日新聞出版)。
--------- 問題を解決し、継続的に世の中を動かす
ための動力 (10ページより) ---------
まず、「アイデア」を上記のように位置づけたうえで、
「把握の技術」「発見の技術」
「転換の技術」「具体の技術」
という構成に沿って独自の発想法を語っています。
その中でも第1章「把握の技術」から、いくつかの
要点を引き出してみることにします。
思いつきとアイデアは違う。(38ページより)
アイデアは無から有を生み出す魔法のようなものではなく、
ある日突然降ってくるものでもなく、思いつきを重ねていく
なかで偶発的に現れるものでもない。
なぜなら、「悩む」ことと「考える」ことに違いがあるように、
「思いつき」と「アイデア」にも違いがあるからだと著者は
いいます。だから、アイデアを生み出すのにスランプが
あるという人は「思いつき」で仕事をしているにすぎないとも。
そして、アイデアはなにかしらの問題を解決するものなので、
「なにが問題か」という設定があったうえで、それを解決できる
かどうかの判断基準が生まれる。
アイデアを生むには手順や基準があり、だからこそ
「アイデアが生まれるのには必然がある」のだそうです。
■そもそも、その課題、それはいったいなんなのか?
(41ページより)
関心がないところに関心を生む。
行動がなかったところに行動を促す。
そのために重要なのは、
「テーマとなっていることとはなんなのか」
「課題とはなんなのか」というところからスタートすること。
きちんと対象と対峙していなければ解決に向かいようが
ないからだといいます。
■本質を捉えた「入口」を見つける。(43ページより)
よく聞く「一枚のシートですべての企画を説明すべし」と
いうようなことについて、著者は疑問を投げかけます。
「物事を端的に表現することは大事なこと」としながらも、
一枚であることが優先された結果人になにかを伝えると
いうことがおろそかになりがちだから。
さらに「一枚できっちり説明しなくてはならない」という
思いが強いからこそ、そういう書類はたいていの場合、
書き出しが甘いのだとか。
その結果、アイデアに向かう最初の入口がないがしろに
され、通り一遍のことが述べられるだけで終わることになる。
しかし本来、入口はアイデアの芽として機能しなければ
ならない見たことがない入口だから魅力があり、見た
ことのない中身へとつながるというわけです。
■課題のすべてについて、疑ってみる。
それがアイデアの土壌となる(44ページより)
たとえば「都心から2時間のさびれた温泉地を
復活させるためのアイデア」というお題に対する
答えを生み出すためには、いきなり解決策に飛ぼうと
せず、豊かな果実を生むための強い土壌をつくる必要が
あるそうです。
都心から2時間、ということはなにを意味するのか。
それはどういう時間になるのか。
日帰りで行けることの意味はなんなのか。
車で行けることの意味はなにか。
電車で行くことの意味はなにか。
さびれている、とはどういうことを言うのか。
そしてそれは本当か。
誰の目からさびれていると言っているのか。
そしてそれは問題なのか。
温泉とはなにか。
温泉とは人にとってなんの意味があるのか。
本当のところ、誰が復活してほしいと思っているのか。
本当のところ、復活したほうがいいのか。
そもそもこのお題は余計なお世話ではないのか。
そもそもこのお題に対峙する意味はあるのか。
--------- このように、徹底的に掘り下げていくということ。
相手から変な顔をされても、著者はすべての仕事でこれを
やっているそうです。
なるほどこうすることによって、本質が見えてくる。
この手段は、あらゆる仕事に応用できるように思います。
* 小手先の技術が語られているわけではなく、本書に
書かれていることの大半は精神論に近いものです。
しかし、そうであるからこそ、心の奥まで根を張るような
「芯」を感じるのも事実。
そして繰り返し読めば読んだ分だけその根は強固
なものになっていくだろうと思います。
--------------------------------------------------
もうGWですね。もう、5月なのですよね。
萌出る緑の感は、皐月やツツジ、風そよぐ鯉のぼりに
見て取れ、季節の移り変わりの早さを否応なく
感じさせます。
このGW、皆さまはどんな本を読まれますか?
10月にこのブログを初め、前期が終了し、
後期が始まりました。今後も皆さまに楽しい
お茶の時間を続けていただけますように。
コメント 0